先日、ついにドゥニ・ヴィルヌーブ監督作品の「デューン 砂の惑星 part1」を観ることができた。昨年最も期待を寄せていた作品だ。劇場で見たかったが残念ながら見られず、やっとツタヤでレンタルが開始されたので満を持してようやく借りることができた。
これまでのヴィルヌーブ監督といえば
・ブレードランナー2049
・ボーダーライン(sicario)
・メッセージ
・プリズナーズ
・複製された男
等の名作を世に送り出している新進気鋭の監督という印象だ。今、ノリにのっている監督の一人といえるだろう。特にボーダーラインは個人的にベスト10に入る程好きな映画である。ブレードランナーも好きな映画の一つだ。
彼が作る映画については、基本的に全体的にダークかつシリアスで独特な世界観が特徴。同じくダークな雰囲気の映画といえばクリストファー・ノーランの作品を思い浮かべるが、私の中では彼と肩を並べる存在である。
今回観たこの「デューン 砂の惑星」は予習をしようと思い原作を買って読んではいたものの、上巻の途中までしか読めていない。分かる範囲ではおおまかには原作に沿ったストーリーとなっているようだった。細かい所は気になったけれども全体的に満足のいく作品であった。
現在読み終えたのは上巻のみ。今作は上巻を元にした作品であり今後はパート2(中巻)、パート3(下巻)という風になっていくものだと勝手に解釈していたがそうではなかった。今作は上巻と中巻にわたるストーリーらしい。上巻は公爵(ポール・アトレイデス)が毒ガスで自殺し、ポールとジェシカが拉致され砂漠に取り残されるシーンまで。
コメント:良かった点
※ここからはネタバレを多少含む
①ウラジミール・ハルコンネン
物語における悪役。主人公:ポール・アトレイデス(アトレイデス家)の敵。
顔つき・演技・体型(メイク)、どれも私が思い描いていたハルコンネンのイメージ通りであった。これでもかというくらいの悪役・漆黒・狡猾なさまを表現してくれていて満足。
良かったシーンの一つ。
罠を仕掛けられ毒ガスで殺されかけた状態になるも、治療のために浸けられていた黒い液体の風呂から出てくるシーン。真っ黒い液体から出てくる様はまさに悪の象徴を感じる。
②音と雰囲気づくり
ブレードランナー2049でも流石だったが、ダークな場面を演出する時の音作りは本当に圧巻であった。ヴィルヌーブ作品は本当に音が素晴らしい。
お気に入りのワンシーン。ハルコンネンがサーダカーを引き連れてアトレイデスが駐留しているアラキスへ出撃する前のシーンだ。この時の意味不明な呪文がヤバさを特に引きだたせている。アトレイデス家に重大な危機が迫っているということが如実に感じられるワンシーンである。「コイツらめちゃくちゃヤバそう」感がひしひしと伝わってくる。
ハルコンネンの登場シーン。ここのシーンの音も素晴らしく良い。
強大な悪(敵)が迫っている危機感を引き立たせるための重要なシーンだ。悪の登場を表現するためにピッタリの音。まさにハルコンネンの怖さ・ヤバさが十分に伝わってくる音である。
↓その他デューンのBGM
③ポールとダンカンのキャスティング
ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)とダンカン・アイダホ(ジェイソン・モモア)のキャスティングはピッタリ。これは原作とイメージ通りで文句なし。
その他感想・原作との比較など
約2時間半という短い時間に全てを詰め込まなければならないので仕方がない。しかし原作と比べるとやはり端折っている感があった。
スパイを暴こうとする過程、人間関係が描かれていなかったのが残念ではあった。原作ではスパイでレディ・ジェシカが疑われていた。その描写はなし。邸宅の壁の中にハルコンネン軍の兵士が潜んでいるのが発覚したがその後は何もなし。
ウェリントン・ユエがいきなりスパイ行為を働いたところで「それまでわずかしか出番がなかった存在感薄めのチョイ役のお前がスパイかよ」という風に見えたし、砂漠でサンドワームに足音を気付かれる場面で足を踏み鳴らして突然「砂太鼓だ!」と言われても原作を知らない人にとってははてなマークがつきかねない。またカインズ博士が出てきた序盤、原作では砂漠に関して詳しい説明をしてくれていたがそれも省略されていた。原作をしっかり読まないと理解しにくい所があり、そのあたりは不親切さを多少感じている。
ウェリントンユエについて
アトレイデス家に仕える医者。映画ではハルコンネンに妻を人質にとられているという設定。妻を救うため仕方なくスパイとなる。物語の展開に大きな影響を与える前半のキーパーソン。
- 原作ではウェリントンユエがスパイだということをほのめかす葛藤の描写があるがそこが描かれていない(映画だからサプライズ的要素のため当然か)。
- ユエは中盤以降のストーリー展開に大きく影響を及ぼすキーキャラクターなのに出演時間が少なくかなりあっさりとしすぎて扱いがかなり残念。
- アトレイデスのブレイン役であるハワトも他人の心を読む能力があるレディ・ジェシカも見事に出し抜かれウェリントンユエのスパイを見破れなかった点がやはり残念。(ここは原作通りだが)
- ツッコミどころは、大事なシールドの見張り番の衛兵が少なすぎるということ・・・。3人だけ??守り薄すぎ。
ガーニーハレック(ジョシュ・ブローリン)について
アトレイデスの右腕。ポールに剣術を教える。原作では吟遊詩人でもある。
- 原作ではガーニーがストーリーの節々で詩を詠む、あるいは歌を歌う描写がある。吟遊詩人の一面をもっているがその描写は一切なかった。これがないとデューンの世界観が完全に出せないのではないだろうかとわずかに疑問。
- デヴィッドリンチ版デューンのガーニー(パトリック・スチュワート)と比べるとキャスティングは良かった。(スタートレックとプロフェッサーXのイメージが強すぎ)しかし見た目に吟遊詩人っぽさがあまりない。どちらかというと、同じくボーダーラインに出演したベニチオ・デル・トロの方が良かったのでは?と感じる。
- ガーニーは主要キャラの一人。しかし出演シーンはハルコンネン軍と地上戦が始まった所で終了。その後の行方がとにかく気になる。
チャニについて
ヒロインキャラ。主人公の夢に何度も出現してくる女。
映画に強い不満は抱いていない。しかしここだけはどうしても述べておきたい。チャニ(ゼンデイヤ)の顔のクセがありすぎるということだ。
ファンが読んで激怒しないよう、クレームがこないようにオブラートに包んで出来る限り配慮して述べさせて頂く。将来のポールの恋人になるであろう、夢に出てくるヒロイン的なキャラなのだからクセがない女優を起用してもらいたかった。人それぞれ外見の好み、価値基準はあるだろう。しかしながらこれはどう見てもクセが強すぎる。何度も述べるがチャニ役の顔のクセがありすぎるのだ。(スパイダーマンのMJ然り)この点においては期待外れとしかいいようがない。
スティルガーについて
砂漠で生きる戦闘民族のリーダー的存在。
スティルガー(ハビエル・バルデム)はもっと大物感が欲しい。別の映画だがノーカントリーのアントンシガーのような大物感・ワル感を勝手に期待していた。雰囲気だけでこいつはヤバいと思わせるような存在感が欲しかった。仲間になったら頼もしい感がいまひとつ。もう少しキャラを濃くしても良かったのではないかと感じる。
最後に
原作を全て読んでいないため空想になるが、今後期待することはガーニーハレックの生存。ダンカンが死んでしまったというのもありなんとしても生き残っていてもらいたい。そしてハルコンネン家のラッバーンと死闘を繰り広げて欲しい。あとチャニ役は次から交代していただけないかという気持ちだ。
何はともあれ先が気になって仕方がないため引き続き原作の中巻、下巻と読むしかない。原作と映画の違いを比較しながら映画を観るというのも楽しみ方の一つであり作品への理解度が深められるだろう。原作を読んでいない方はぜひおすすめさせていただく。次回作はおそらく来年~再来年というところだろう。とにかく待ち遠しい。