本書の内容
ライムスター宇多丸氏がDJを務めるラジオ番組内の一企画を書籍化したもの。
思春期真っ盛りの子供のプライベート・気持ちに土足で踏み込んでくる母親に対するリスナーの愚痴投稿をまとめ上げたものである。
本書では母親の無神経さと行き過ぎた気遣い・母性が相まっていることを総称して「母シズム」と呼んでいる。
本書はその「母シズム」の被害事例集である。
本書はどのエピソードも総じて面白いがそれでけではない。
ライムスター宇多丸師匠の的確なコメント、ボキャブラリー、言い回しのバリエーションの多さは流石としか言いようがない。
更に本書は思春期の子供、これから思春期になる子供を持つ母親には一度読むべき本として推奨させて頂く。
おすすめエピソードベスト3
・「閉めて」「閉めません」
彼氏との行為がバレた時の母娘の押し問答が秀逸。
わが子を大切に思う母親の行き過ぎたババァノックエピソード。
・「ご飯」「島」「愛」
外国人の母親を持つ子供でないと体験することはない珍しいケース。
いかがわしいビデオの所持が母親にバレてしまったときの修羅場の話
名探偵コナンのくだりが秀逸。
・「寄生虫見えてるよ」
母の過度な心配によって引き起こされた悲劇の物語。
子供が感じた精神的苦痛は計り知れないものだっただろう。
感想
ほとんど全て質の高いネタで終始笑ってあっという間に読了。寄せられた投稿はどれも優れた表現力・豊富なボキャブラリーで飽きがこなかった。
他人からすると笑い話で終わるが、母シズムの被害にあった子供たちにとっては大きな屈辱を味わい面子をつぶされることになる。
本人からすればこれは全く笑い話では済まされないのだ。
親側からすればこれは大人になるための一種の通過儀礼だと考える者も中にはいるかもしれない。しかし当然のことながら無駄な家族の軋轢はないに越したことはない。
親心であまりに無神経に子供に干渉してしまうと大きなトラウマを植え付けてしまう恐れがあるということ。
親子関係に大きな溝をつくりかねない事態に陥ってしまうことを認識しておかなければならない。
本書はそれをなるべく避けるための反面教師にすべき実例が数多く掲載されている。当然ながら母親だけでなく父親も読むべきだ。古本で500円前後と格安で売られているので是非読むべき良書としておすすめさせていただく。